語源は、Cinta=縁取り、帯+senese=シエナの文字通り、
前足に薄ピンクの帯が入ったシエナ産の黒豚です。
『チンタセネーゼ』とは、イタリアでも絶滅しそうになった珍しい貴重な豚です。
このチンタセネーゼという豚は、松の実やドングリといった自然のものしか食べず、
育てるのに時間がかかることから、農家が敬遠して数が減っていたのを復活させたものなのです。
復活させたのはパオロ・パリーズィ。
彼は、もともとジェノバ生まれの都会っ子でしたが、
脱サラして自然放牧による牧畜業に転向しました。
ある日、イタリア原産種の豚「チンタネーゼ」に出会って一目ぼれ。
わずか三頭から、飼育を始めたのです。
それはほかの生産者に、ユー・アー・クレイジー!といわれるほどの暴挙でした。
というのも、チンタネーゼは、小型で成長が遅く充分な運動をさせないと
肉質が著しく劣るという、じつに厄介な豚。
このため生産者から敬遠され、いまや絶滅寸前という代物だったのです。
ここから、パオロの不撓不屈 の挑戦が始まりました。
彼の飼育法は、徹底してよい環境を与えること。
豚は、広々と清潔な豚舎で眠り、夜明けとともに、
雑木林や池が点在するのどかな丘に放牧されます。
ここで、大好きな水浴びをしたり、草やきの根、団栗、松の実などを探して自由に食べる、
文字どおりの楽園生活。
妊娠も出産も自然にまかせるので、出産時に圧死してしまう仔豚もいるとのこと。
こうして自然洵汰され、生命力の強い健康な仔豚だけが生き残り、
さらに三年数カ月という時間をかけてゆっくり育てられるのです。
ここまでして、育てられた貴重な品種の「チンタネーゼ」
美味しさも、格別です。