リッチで凝縮感溢れる「もう一つのドミナス」
〜 ナパヌック 〜
ナパ最古と言われる優良畑「ナパヌック」の名を冠したこのワイン。コンセプトは「若いうちでも十分に楽しめるボルドーブレンドワイン」。ドミナスのセカンドワインとしてではなく、ナパヌックのテロワールを活かすべく造られるワインです。ブラックチェリーやベリー系のアロマ、そしてハーブやスパイスが口の中いっぱいに広がります。
カリフォルニアのヨーントヴィルに位置する「ドミナス・エステート」。オーパス・ワン、モンダヴィ・シルバーオークといった有名なワイナリーがひしめき合う通りに位置しています。
数ある“カリフォルニアのプレミアムワイン”の中でもトップクオリティを誇るドミナス。日本ではあまり市場に流通していなかったため、ご存知ない方が多いかもしれませんが、実はオーパス・ワンと並ぶ凄いワインなのです。
ペトリュス、ラフルールペトリュス、トロタノワ、オザンナ、ベレール・モナンジュなどボルドー右岸のスターワインを育てあげた、世界屈指のワインメーカー、クリスチャン・ムエックス氏。ドミナスは、クリスチャン・ムエックス氏が今もっとも力を注いでいるワインです。現在も、もちろんこれらのボルドーのワインを手掛けていますが、年間通して滞在しているのはカリフォルニアだと言います。
1968年から1969年にかけてムエックス氏はカルフォルニアのデイヴィス校にてワイン造りを学びました。その時以来ナパヴァレーの地に魅せられ、1980年代初頭、この地を再び訪れた際、ナパ最古と言われる優良畑「ナパヌック・ヴィンヤード」に足を踏み入れた途端、直感的に悟ります。
この場所だ。私はここでワインを造るべきだ。
早速、ムエックス氏はこの「ナパヌック・ヴィンヤード」にドミナス・エステートを創設。ワイン造りを始めました。ファーストヴィンテージは1983年。最初はジョイントベンチャーとしてのスタートしました。タッグを組んだ相手は伝説的なナパワイン「イングルヌック」のジョン・ダニエルの娘=ロビン・ダニエル・レイルとマーシャ・スミス。ジョイントベンチャーというとロバート・モンダヴィとムートン・ロスシルドのオーパスワンがまず頭に浮かびますが、実はドミナスもとんでもない組み合わせの仏英ジョイントベンチャーだったのです。
そして1995年、彼はドミナス・エステートを完全に所有・運営することになりました。
ナパ・ヴァレーは、アメリカ西海岸ならではの、南北に走る山脈が織りなすヴァレーの一つで、太古のジュラ紀には海の底であったといわれます。
山脈に守られたナパ・ヴァレーは太平洋からの寒流を受ける海岸線のエリアよりも、温暖な気候に恵まれています。その南北約50kmの細長い地域の中では、南方サンパブロ湾からの海風と霧の影響を受けるため、北上するほど気温は上昇します。「ナパヌック・ヴィンヤード」のヨーントヴィルはナパ・ヴァレーの中では南側に位置するため比較的冷涼となり、暑すぎる気候で育った筋肉質なワインとは違う、エレガントで優雅なカベルネソーヴィニヨンが育ちます。
そして実は、この土地からドミナスの位置する土地からオーパス・ワンの畑が目と鼻の先。キャラクターは違えど、カルフォルニアのプレミアムワインを生み出す、最高の地域であることは揺るぎない事実なのです。
ドミナスが誕生した1980年代、カリフォルニアではブドウ栽培とワイン醸造は分業制があたりまえであり、あのダラ・ヴァレーも自社所有の畑は「マヤ」だけでした。オーパス・ワンもブドウは契約農家からの買い付けていたという中、ムエックス氏はボルドーで行っているようにブドウ造りから瓶詰めまでを一貫して行うドメーヌ方式を持ち込み、カリフォルニアのワイン界に大きな衝撃を与えました。
ムエックス氏が一貫して目指すワインのスタイルはエレガントで複雑な味わい。そのためにボルドーで培った栽培技術を持ち込み、徹底した畑の管理を行っています。
カリフォルニアといえば日照量と温暖な気候が魅力ですが、ドミナスではその気候故のブドウの「糖度」が上がりすぎてしまうことが課題となっているため、枝をワイヤーで支え、葉を多めに茂らせ日照量を調節しています。また根が下に深く張ることが、良いブドウの実をつける要因ですが、区画の一番端の樹は地中で広々と根を広げてしまうため、他の区画と分けて収穫を行うという、驚くほどの手間が掛けられています。
こうしてドミナス・エステートで丁寧に造られるワインは、ボルドーの技術とナパ・ヴァレーのテロワールが見事に融合し、上質なパワーとエレガンスを感じるスタイル。カリフォルニアの持ち味である円熟した味わいに加え、ボルドーのグランヴァンに通じる複雑性を兼ね合わせた逸品であり、カリフォルニアがお好きな方はもちろんのこと、ボルドーラヴァーにも是非味わっていただきたい特別なワインです。